"恥"の概念

 最近、時代劇をよく見る。時代劇では、官僚(武士)の切腹、家名断絶(子孫の公職追放)が頻発する。汚職をしたものは言うに及ばず、"不正の疑いが出たもの"、"不正に気づけなかったもの"、中には直接関係のない善人までが切腹していく。所詮フィクションで前近代的ではあるが、そこには「恥」の概念が息づいているように思われた。

 今、財務省にせよ、安倍政権にせよ「恥」の上塗りどころか、「恥」厚化粧みたいなことをしている。おまけに防衛省も、今がチャンスとばかりに恥ずかしげもなく不祥事垂れ流している……。疑惑が出るだけでも恥ずかしいと自身の行動を省みるのが、本来の日本のエリート文化に思うが、今は「わたしが何やったっていうんだ。証拠を出せよ」みたいな居直り姿が目につく。本当に情けない。

 恣意的な減額による土地払い下げ、セクハラ、日報隠し、冷静に見れば本当にひどい有様だが、こんな状態にも関わらず、さして問題にもなってこなかったのは、ひとえに"野党"のせいでもある。
 野党は、誰が見ても"悪"だという、世論とはずれた、勝手な世論を妄想してそれに従い、正義の執行人ヅラして、偉そうにしている。さながら、自分たちは清廉であり、みんなが"悪い"と思うことに、安全なところから文句を言う。まさに"虎の威を借る狐"の姿だ。一部を除き、言葉に自分の考えや責任が全く乗っていない。匿名とは言わないが、記名の2chがあるとすれば、そこで適当に質問してるのとレベルが変わらない。
 子供の喧嘩みたいな正論での質問しかできない(小西ちゃんとか、柚木ちゃんとか、共産党の小池ちゃんは党是としてしょうがないと思う)野党を見ると、正直腹立たしさしか感じない。おまけに質問や態度に品性も感じられない。この人達にも「恥」の概念はなさそうだ。与党も与党なら野党も野党という感じ。

 こういう思いの方、実は多いんじゃなかろうか。そうなれば畢竟、自民党内の野党、石破、野田等に白羽の矢が立つ。でも、具体的に安倍ちゃんよりマシなのか、どう違うのかが全くわからない。政治信条は絶対に違うだろうけど、とにかくわかりづらい。
 思えば、これは政治だけの話じゃないかもしれない。活版印刷の普及以来、史上最も「ことば」や「情報」が溢れる社会において、みんな「なんでも知れて、なんでも語れる」時代になった。そして「恥」の概念も失ったように思う。

 昔は何をするにせよ、「だいそれたこと」「はじめてのこと」にちょっとおっかなびっくりみたいなところがあったように思う。例えば、ちょっと高いホテルや、料理屋、クラブなんかも「情報」が少なくて「夢」があったし、恥ずかしくないように気をつけもした。今は、値段も分かるしサービス内容もわかるから、「ああこれくらいなんだ、俺でも行けるじゃん」みたいな考えで行動を起こす人が多い。

 だから、政治だけでなく、日本全体が驕ってるように感じる。「情報」が溢れる時代になって、「偉そうな知ったかぶり」が増えたように思うし、人間に余裕もなくなった。時代遡行は許されないが、ネットにせよSNSにせよ、そろそろ普及して時間がたってきてるのだから、付き合い方を考えるべきなのではないか。時代的にはプロテスタント社会主義が広がった時代に近いように思う。啓蒙された民衆が技術の使い方がわからず、右往左往しながら戦争へと突き進む時代が来そうで怖い。